福岡市が副首都に「適地」とされる一方で、警固断層による地震リスクは無視できない現実です。都市機能のバックアップ先として本当に安全なのか、冷静な検証が求められます。
福岡市の高島宗一郎市長は、維新の副首都構想に対して「首都のバックアップ機能なら、福岡はまさに適地」と発言し、南海トラフ地震の被災リスクが少ないことを根拠に優位性をアピールしました。確かに福岡は九州最大の都市であり、交通・通信インフラも整備されており、首都圏のBCP(事業継続計画)を支える候補地としてのポテンシャルは高いと言えます。
しかし、福岡市の地下には「警固断層帯南東部」という活断層が走っており、これは国の地震調査研究推進本部によって「最も危険なSランク」に位置づけられています。この断層が一度に活動した場合、マグニチュード7.2程度の地震が発生する可能性があり、福岡市中心部では震度6強の揺れが想定されています。死者は1,000人以上、建物の全壊は18,000棟以上という被害予測も出ており、都市機能の麻痺は避けられません。
さらに、警固断層南東部は約4,300〜3,400年前に活動した記録があり、**今後30年以内に地震が発生する確率は0.3〜6%**と、国内の活断層の中でも高いグループに属しています。これは阪神・淡路大震災の直前に示されていた確率(0.02〜8%)と同程度であり、決して「安全」とは言い切れない状況です。
副首都構想は、首都圏が災害で機能不全に陥った際のバックアップとしての役割を担うもの。その候補地が、直下型地震のリスクを抱える地域であることは、構想の根幹に関わる問題です。もちろん、福岡市は防災対策を進めており、耐震化や避難訓練などの取り組みも評価されるべきですが、都市の選定には「地震リスクの総合的な評価」が不可欠です。
副首都に求められるのは、政治・経済・行政機能の継続性と安全性。その意味で、福岡市が「適地」であるかどうかは、地震リスクを含めた冷静な議論が必要です。

